イタリア言の葉

2年半ぶりに再開しました。イタリア生活22年のフリー通訳・翻訳者が北東の町パドバより発信する「社会派」ブログ

トラックバックは承認制になっていますので、過去記事にいただく時は(確認が遅くなりますので)コメントで一言お知らせください。
<< June 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

- | permalink | - | -
<< イタリアの環境教育 | main | 清掃ロボット(Robot Spazzino) >>

飲酒運転常習国 イタリア

私が飲酒運転について気になり始めたのは、去年の8月にマキシム・スタビスキーが飲酒運転で死亡事故を引き起こした、と言うニュースを知った時からです。

スタビスキーはロシア出身の才能・実力共に超一流のアイスダンス選手。パートナーのデンコワ選手と共にブルガリア代表として、3月に東京で行われたフィギュアスケート世界選手権で、圧倒的な感動を引き起こす演技を見せて2連勝をなしとげ、成功のただなかにいました。

この事故で23歳の若者が死亡し、19歳の女性が4ヶ月間意識不明の昏睡状態に陥り、2人が負傷する、と4人の被害者を出しました。スタビスキーは「戦車」と形容される頑丈な車を運転していたため、全く負傷がなかったそうです。

事故後の報道で、スタビスキーがブルガリアの飲酒運転撲滅キャンペーンに参加していたことがわかり、すでに充分すぎるほど難しい状況の上に、更に複雑な感情を引き起こしたことと思います。

全てが順調で将来への希望に輝いていたまだ若く才能あふれるスケーターが、この事故を引き起こしたことで、最悪なら懲役10年の刑に処されるかもしれないというどん底の状態に陥りました。スタビスキーは事故直後に「飲酒はしていたが、断じて酔ってはいなかった。飲酒で判断力が劣っていたとは思えない。」とコメントしたと読みました。

被害者にとってはきっと許せない思いがする発言でしょう。飲酒運転が悪いことで、いかに危険かという認識が広くいきわたっている日本でも、反発を持って受け止められる発言だと思います。

危険や罪の意識を持たずに習慣的に飲酒運転をしている国イタリアに住む私には、この発言がどんな心情から出たか、何となく理解できてしまうのです。理解できるからと言って受け入れるわけではないですが、何故こんなことになってしまったのか、という自分でも信じられない思いが言わせた言葉だろうな、と想像がつくのです。

この感覚を分かっていただくために、イタリアでの飲酒運転に関する現状やそれに対する取り組みはどうなっているのかご紹介します。

まず、イタリアの交通事故死亡者は年間5000人、事故が原因で重度の障害者となってしまう人が2万人、負傷者は30万人。

免許を取ったばかりの若年層(イタリアでは50ccのバイクは16歳から、自動車免許は18歳の誕生日6ヶ月前から試験が受けられます。)に特に事故率が高く、15歳から29歳までのイタリア人の死因1は交通事故死だそうです。

イタリア人のアルコール摂取に関する調査では、300万人が習慣的にアルコールを摂取すると答えており、そのうち100万人はアルコール依存症だそうです。

初めての飲酒年齢は11歳から12歳と、EU諸国の平均年齢14歳よりかなり低く、未成年を含む7%の若者が、週3回以上飲酒すると答えています。

アルコールと自動車事故との関係は、45%の事故原因が飲酒運転と、高い数値が出ています。イタリアは飲酒運転常習国なのです。

イタリア人は飲酒運転に関する意識が低い気がします。食事をする時にはアルコールを摂取するのが当たり前の文化、外食すれば運転して帰る場合も二人でワイン一本ぐらい平気で飲んでしまいます。公共の交通機関が少なく、中小の都市ではタクシーなど存在しないところもあるなど、マイカー社会なのも大きな原因です。

車を運転しなければ出先から家へ帰れないからです。特に問題になるのが、若者がディスコでアルコール度数の高いカクテルを飲んだあと高速運転して引き起こす事故が毎週のように起きることです。

危険意識が低くとも実際の事故はたくさんおきているわけで、若者の悲惨な死亡事故が連発することもあって、遅まきながらここのところ飲酒運転の取締りが厳しくなってきました。21歳までは時速110km以上が出せないように改正されたり、血中アルコール濃度の限度も引き下げられました。

現在の法定血中アルコール濃度の限度は1リットル当たり0.5%、成人女性ならグラス2杯(24g)、成人男性はグラス3杯(36g)だそうです。これ以上飲むと視界が狭まり、光や音などへの反応が鈍くなり危険時の対処が遅れる限界量だそうです。

外食して飲めばほぼ全員が限度に引っかかる現状では、取り締まりだけではなく、飲酒運転がいかに危険か、意識を高める啓蒙運動がまず必要なのでは、と思います。

飲酒運転撲滅対策の一環で
La vita non è un optional! Se bevi, non guidare. 人生はオプションじゃない(掛け替えがないという意)飲むなら運転するな!

というメッセージが運転年齢の若者の携帯電話に送られるキャンペーンも試みられました。

本当は小学生ぐらいから学校で「交通安全を学ぶ」時間を設け、できれば運転免許取得に、事故現場の惨状や事故を起こすと家族を含めてどれだけ悲惨な状況を引き起こすのかを見せるドキュメンタリーの視聴を義務づけるぐらいの「ショック療法」が欲しいところです。

飲酒運転はしなくとも、危険意識が低いための無謀運転をするイタリア人もよく見受け、横断歩道を通行中に事故にあう歩行者がかなりいます。

横断歩道を渡っている通行者に突っ込むのはちょっと信じられない事故ですが、歩行者を通すために停車した車を後続車が追い越そうとして歩行者にぶつかるため、実際にかなりの頻度で起きています。

飲酒運転に罪の意識がないため、事故を起こした場合にも加害者に対する社会的制裁のような空気は生まれにくいです。酒気帯び運転で書類送検になれば、事故を起こしていなくとも社会人にあるまじき行為と停学や懲戒免職処分になる日本とはだいぶ違います。

今回スタビスキーには、執行猶予付きで懲役処分は課されず、社会奉仕労働と賠償金の支払いを義務付ける判決が下りました。懲役より社会奉仕活動が改心するのに効果的だ、と言う弁護側の主張が受け入れられたためだ、と言います。

社会奉仕活動が交通事故の死亡者や負傷者の救助手伝いや、事故現場の後始末であれば、確かに懲役よりはるかに効果的だと思います。救急病棟に麻酔医として勤務する友人は、毎日のように2輪車事故にあった若者を扱っているため、子供が大きくなっても決してバイクは買い与えないと固く誓っているそうです。

子供がどうしてもバイクが欲しいと言ったら、自分の職場に連れて行って一日その場で見学させる。そうすれば必ず乗りたいといわなくなるだろう、と言うのです。

にほんブログ村 海外生活ブログへランキングに参加しています。皆様の暖かいワンクリックをお願いします。

Cultura Italiana(イタリアンカルチャー) | permalink | comments(0) | trackbacks(0)

スポンサーサイト

- | permalink | - | -

この記事に対するコメント

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://ita-kotonoha.jugem.jp/trackback/252
この記事に対するトラックバック