イタリア言の葉

2年半ぶりに再開しました。イタリア生活22年のフリー通訳・翻訳者が北東の町パドバより発信する「社会派」ブログ

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カラブリア犯罪組織(ンドランゲタ)王国と幻の憲兵隊軍営

これまでシチリア島の犯罪組織マフィア(Mafia)の陰に隠れてマイナーな存在だった、カラブリア州の犯罪組織「ンドランゲタ(Ndrangheta)」が、8月15日の事件で一躍国際的に注目を浴びました。

事件の詳細は上のニュースをお読み下さい。私のンドランゲタについて書いたトピ

20日付のイタリア経済新聞で、今回の事件で国際的に知られたンドランゲタ支配地の一つ、レッジョ・カラブリア県下サン・ルカ市(San Luca)で、反ドランゲタ前哨基地となるはずだった「幻の憲兵隊軍営」建設の経緯を書いた記事があり、なかなか興味深かったので抜粋をお届けします。

記事の伝えるンドランゲタの規模ですが、
155ファミリー(Cosca)、構成員6千人(カラブリア州人口の2.7%にあたる)

主要ビジネスのヘロイン・コカイン流通から得る利益が220億ユーロ(21日の為替レートは1ユーロ約155円)でイタリア国内総生産の3.4%に値する額。

その他 闇ルートでの銃器・ダイヤモンド流通や、不動産業・商店やカジノ経営・移民の違法入国手配など、さまざまなビジネスに手を染め、ヨーロッパの主要各国にルートがあり、外国への浸透もかなり進んでいると見られます。
さて、カラブリアの観光名所で紹介したジェラーチェに近い、サン・ルカという人口4500人の町は1980年代からンドランゲタによる麻薬の流通や誘拐・殺人が横行する町でした。

ンドランゲタによる誘拐が横行していたカラブリア州に、イタリア国家権力のシンボルを築く意気込みで、1985年にサン・ルカ市に憲兵隊軍営の建設が計画されました。

当時としては巨額の28億リラを投じた公開入札で、受注したのはンドランゲタに屈しない反骨の実業家として名を知られたスカンビア(Scambia)氏率いる建設会社「サリーネ(Saline)」。

実際の工事を請け負った、下請けの建設会社「ジェオラス(Georas)」がサン・ルカ村で工事を開始したのが1995年11月3日のこと。

一週間もたたぬうち、工事現場に脅迫ビラが張り出され、スカンビア氏に1億リラを払うよう最初の要求が届きます。スカンビア氏もすかさず憲兵隊に最初の告訴。

数日後今度は現場の仕切り近くにいた現場監督が「金を払わなければ火をつける。」と顔を見せない脅迫者の声を聞きます。そして二度目の告訴が。

日中は憲兵隊が工事現場の警備に当たりますが、夜間の警備は「あまりにも危険。」だとして行われず、その後も脅迫は続き、ついにある夜、資産価値2億5000万リラ相当の土木機械がガソリンをかけて燃やされます。

工事は一時中断し、何度目かの告訴に対して、おざなりの捜査が終了すると、会社側は改めて軍隊に工事現場保安の要請をします。

スカンビア氏はマスコミを通して「イタリア国家は、サン・ルカ市の憲兵隊軍営の建設現場を守ることすらできない。」と訴えますが、工事を再開することは保安上問題があるとして、中断したまましばらく時が流れます。

しばらくして、レッジョ・カラブリア連隊に、ドランゲタの首領を多く逮捕し勇名をはせたニッリョ(Niglio)大佐が赴任してきます。ニッリョ大佐はサン・ルカ村の工事再開の秘命を受けてきたのでした。

サン・ルカ村を本拠とするンドランゲタ首領達の住居を直々に連訪した大佐は「憲兵隊の軍営建設を邪魔すれば、お前達の住居に毎日部下をやって捜査させるが、それでも良いか。」とにらみを利かしたそうです。

こうして工事再開の目途が立っても、ンドランゲタの「頭を吹っ飛ばしてやる。」という脅迫に恐れをなして現場監督は逃走しており、後任を探すのは至難の業でした。

なんとか後任も見つけ、憲兵隊の警護の中で工事が再開し、夜間のパトロールは電気工事人に変装した憲兵が勤める中、全てをひっくり返すような事件がおきました。

建設計画の責任者であるスカンビオ氏がレッジョ・カラブリア地検に「犯罪組織との癒着の疑い」で起訴されたのです。

工事を再開できたのは、ンドランゲタの要求に応じて上納金を払ったからだという、妄想に近いばかげた嫌疑でした。

この起訴騒動で、清廉で知られた実業家スカンビオ氏の評判は地に落ち、一家の経済も破綻、会社すら立ち行かなくなり、同時にサン・ルカ村の軍営建設も止めを差されたわけです。

後年になってニッリョ大佐の関与が認識されると、スカンビオ氏に対する10件近くの起訴は全て取り下げとなりました。

しかし地検に起訴された前歴を人々の記憶から消し去ることはできず、会社も破産したスカンビオ氏には何も残されなかったのです。

スカンビオ氏の破綻後、建設計画はついに再発注されず、工事開始12年後の今、サン・ルカ村の工事現場は土台工事の後だけが残っています。イタリア国家権力がンドランゲタ勢力の前に屈した記念碑のように・・・・


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- | - | 2007/08/23 7:10 PM