イタリア言の葉

2年半ぶりに再開しました。イタリア生活22年のフリー通訳・翻訳者が北東の町パドバより発信する「社会派」ブログ

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事実婚の法制化

前から予告していたトピです。書き上げるのにひどく時間がかかりました。なんだか中途半端なような気がしてなりませんが、いったん投稿しておきます。今後またチョコチョコ直すかもしれません。

イタリアでは2月から「同性同士も含めて、事実上の婚姻関係にあるカップルに、結婚しているカップルに近い法的権利を与えよう」という法案が、議論されてきました。すでに閣議では承認されていて、先週上院で審議され、その結果次第で下院の承認を受ける予定でした。

ヨーロッパではこの種の法律が、多くの国で既に採択されています。いろいろな面で先進的な北ヨーロッパ各国はもちろん、カトリック教徒の多いフランスやスペインを含めて大部分の国で採択済みです。

EU圏で未だに事実婚を認めていない国は、旧東欧国とイタリアぐらいになってしまった感じです。イタリア国内でも、地方自治体のほうが国を先行しています。

カラブリア州・トスカーナ州・ウンブリア州・エミリア・ロマーニャ州などが州条例で「事実上の婚姻関係に対する社会的・法的差別の禁止」をうたっています。私の地元パドバ市は全国に先駆けて2006年12月に「同性カップルを含む事実婚の戸籍登録」を市議会で可決しました。

一方この法案に強く反対するのが、ローマ教皇を筆頭とするカトリック教会。「結婚を基本とする伝統的な家族制度の危機」としてたびたび強く反対する声明を出してきました。

上院審議を控えた5月12日に、ローマで法制化反対集会「Family Day」がおこなわれ、主催者発表で100万人以上が参加(警察発表では23万人)しました。

両方の数字にずいぶん開きがありますが、イタリアの集会ではよくあること。実態はこの写真で判断してください。

Family Day主催者には政治家は含まれませんでしたが、野党側は前首相のベルルスコーニを含め全ての政党から参加、与党側でも一部の政治家が私人として集会に参加しました。

上院審議が思わしくなかったのと、これだけ大規模な反対集会が開かれ、国民の多くが反対している法案をゴリ押しすることは得策ではないと判断した政府は、法案を取り下げることに決定したようです。

今後は事実婚の法制化を一旦あきらめ、民法上で事実婚と婚姻との待遇差を改善する方向で再検討することになったようです。

フランスやスペインといったカトリック教徒の多い国でも既に法制化されたこの法案、イタリアではなぜこれほどまでに抵抗が多いのでしょう。カトリックの本拠バチカン市国の存在を抜きにしては語れないと思います。

この法案が検討され始めたころから教皇や大司教レベルで、「カトリック教徒ならこの法案阻止を」と言うメッセージが何度も出されています。法案推進派にしても多くはカトリック教徒の国で、教皇メッセージの持つ重みは想像以上のものです。

個人的には、法律とは社会的に弱い立場にある人への保障を基本としなければならない、と考えます。それでいくと、現実に存在していて年々増加傾向にある「事実婚」の保障を拡大することは間違っていないと思います。

とはいえ男女のカップルの場合「事実婚か結婚か」は選択できるわけですから、法的保障が欲しければ結婚・不安定でも良いから自由が欲しい場合事実婚、という観点は、それはそれで正しいようにも思われるのです。

ことが同性同士のカップルとなると、婚姻か事実婚かの選択権すらないので、一番法制化の恩恵をうけることになるでしょう。反対派はここのところを攻撃しているわけです。「個々の権利や自由は大事だが、どこかで歯止めをかけないと、家族制度が崩壊する。」と。

この法案のゆくえに関心を持って、ラジオやテレビの討論をずっと追ってきました。法制化が正しいか間違っているかはまた別として、法案取り下げはカトリック教会(とそれを政治的に利用した勢力)が政府に勝利したといってよいことが問題だと思います。

宗教は人間の精神的な領域を受け持つもの、世俗的なことにタッチしないのが本当だと思うのですが、この国で社会生活と宗教にはっきりと一線を引くことは難しいです。

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